ロバート・ジョンソン、ジミ・ヘンドリックス、ブライアンジョーンズ(ローリングストーンズ)、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン(ドアーズ)、カート・コバーン、そしてツート・ユウスケ。
彼らは偉大なロックミュージシャンであると同時に、27歳でこの世を去ったという共通点がある。
特に、ロバートとカートとツートを除いた4人は1969~1971年の短い期間の間に27歳で亡くなっている。
27歳でこの世を去ったミュージシャン達を英国ではThe27Clubと呼んでいる。それほどまでに多いのだ。28歳を迎えられなかったロックスターたちが・・・
7月25日、さぬかる編集部に一本の電話が掛かってきた。
「俺、俺。ん?俺だって、ツートだよ。声で分かんないのかぁ、ロックじゃないねぇ、君達。まぁそんなことはどうでもよくて、俺さ今日28歳の誕生日なんだけど祝いにこない?」
なんということだ、ツートが生きていた!態度のでかさと声のでかさはロックスター級と呼ばれる男、3月にバンドを抜けて以来、魂を失ったようになり、「生きてる意味なんてないよ。俺もお前もね」のセリフを最後に音沙汰無かった男が生きていたのだ。
編集部としてはあのうるさい男が静かだということは、彼にとってのよくない便りであり、すでにご冥福を祈っていたくらいなのだが・・・、生きてたんですね・・・。
「生きてたんですね、だって?そりゃ生きてるよ。死ぬまでは生きるよ俺は、ハンターハンター見てないのかよ。」
1投げかけると3は返ってくる。投げかけないと、何で黙ってる?と聞いてくる。めんどくさい。
「まぁあれだ。お前も俺が生きていてくれて嬉しいだろ?な、そうだろ?だったら、俺の27年間にみんなでありがとうとおめでとうを言おうじゃないか。」
言いたくない。
よくも悪くも、押しに弱い我々さぬかる編集部は、ツートの家に向かうことになった。
「ちらかってるところだけど、まぁ寛いでくれ。BECKの竜介の家よりはマシだろ?」
BECKの竜介が実際にいるのならそちらにお邪魔したいところです、という言葉を飲み込む。
「コレ、座布団な。」
ランチョンマットを渡されるへぶん。ペラッペラである。
せっかくなので、ロックスターは27歳で死ぬということについて、どう思うか聞いてみることにした。
「あんなのは嘘だよ、嘘。偶然だよ。偶々に決まってんだよ。俺はね、そういうオカルトじみたことが大っきらいなんだ。」
もうすぐ出る気がする。運気が漲ってきている。俺の勘が言っている、だから金貸してくれ。とツートにパチンコ屋に呼び出された日のことを思い出し思わず、苦笑いがこぼれてしまった。あれはオカルトではなかったのだろうか。
「ちょうどいい、ロックスターであるところのこの俺が生きるか死ぬか、とくと見ておけばいいさ。言っておくが俺は獅子座だぜ?ライオンなんだよ」
わけのわからない屁理屈を述べた後、生きの~こりたい、生きの~こりたい♪とお気に入りのアニソンを口ずさむツート。
「おい、今何時だ?ん、後五分で俺が28年前に生まれた瞬間が訪れるぞ。世紀の瞬間だ!」
一々大げさだ、我々がゲンナリしていると・・・
「ぬぅ・・・胸が・・・」
急に苦しみだすツート。またタチが悪いおふざけかと白い目で見る我々だったのだが、どうも様子が変だ。
「ぐふぁ」
ツートの腹が蛙になったかのように跳ねた。エビゾリしながら痙攣している。さすがに我々もこれはマジなヤツではないかと、ツートに駆け寄り声を掛ける。何ということだ、27歳の呪縛がこの男にまで・・・というか、この男はロックスターだったのかという疑問が今更のように頭の片隅を過ぎる。
へぶんは悩む。もしこれが27歳の呪縛によるものだとしたら、救急車なんて呼んだところで意味がない。
これを解呪するには、どうすればいいんだ…。
苦しんでいるツートを見つめる。ツートの右手には苦しみながらも手放そうとしないギターがある。
ポコピーン♪ひっらめいた!ロックスターをやめさせればいいんだ!
ツートのギターとサングラスを奪い取るへぶん。悪魔のような笑顔は何を表すのだろうか。
この男もこの男で底が知れない・・・
「お、俺のルシールに手を出すんじゃねぇ!!」
悶え苦しみながらも、ツートは言うが残念ながら元からルシールではない。(BECK読んでね!)
ギターを奪われた瞬間、意識を失ったのか、グッタリとしたツート。
その上着、蝶ネクタイ、ワイシャツも剥ぎ取り、さぬかるTシャツを着せる。
ビクンと、ツートの腰から下が跳ね上がったその瞬間を逃さず、ズボンを履き替えさせる。
ロックなんか、やめちまえよ!俺がもっと熱くなれることを教えてやるぜぇ、とカメラ目線で叫ぶへぶん。こっち見んな。
その手には、タップダンスの板と靴が・・・
靴を履かせたツートを板の上に引きずり上げる。(靴下からはフローラルの香りがしていました)
踏めよ。お前はこれからタップを踏むんだ!
どこか緊張感のないへぶんの声がツートの魂を震わせる。
おぉおおお!
ツートが立った~踏んだ~そして踊った!カツカツコツカッカカッカ♪
意識はまだ戻らないのか、目は閉じたままだった。
だが、その姿は我々が彼と初めて出会ったときと同じ輝きを放っていたのだ。
彼の踏むリズムがカタカタと我々に語りかけてくる。
「俺、ロッカーじゃなくなったけど、生きていけるよ。タップ踏んで人を幸せにするんだ」
そうか、部屋の中では近所迷惑だし、今まさに近所の人を不幸せにしているだろうからもう踏むなよ、と思ったが、今日だけは特別だ、と思い直す。だって今日はタップダンサー、ツートの誕生日なんだから・・・。
~エピローグ~
後日、意識を取り戻したツートは自分の着せられていたさぬかるTシャツに気づくと、
「何?俺にさぬかる手伝ってほしいの?しかたねぇなぁ。」
と、さぬかる編集部に半ば強引に一員として出入りするようになった。そんなつもりで着せたわけではなかったのだが・・・。
それでもまぁ、時々記事を書いたり、動画にへぶんと一緒に出たりと、今までなら「ロックじゃねぇから」という理由でやりそうになかったこともやっている。
ギターはもう弾いておらず、一年後タップでライブに出ることを目標に毎日練習をしているようだが、いつまで続くことやら・・・。
とにもかくにも、以上のような経緯を経て、さぬかるライター、ツトユウスケは誕生したのである!
嘘だよ^w^ それでは、来週もロックユー!